第1回座談会報告
クラビズさんの事業内容を教えていただけますか。
地元の広告会社として創業し、昨年50周年を迎えました。常に時代の流れを先取りしながら、現在はWEB事業、クリエイティブ事業、飲食事業、アパレル事業、EC事業、ドライフラワーの企画販売など幅広く事業展開を行なっています。2013年に、「冷えとり靴下」に代表されるオリジナルブランド「くらしきぬ」が爆発的に売れたことをきっかけにEC事業にも本格的に乗り出しました。2018年にはスワッグ・ドライフラワーの専門店「土と風の植物園」のECサイトも立ち上げました。
ネット検索で「面白い企業」としてヒットしています。若い方々の間でも注目を集めていることをどうお感じですか。
意図しているわけではないですが、自分たちの企業をいかに面白く見せるか、仕事をどうやったら面白くできるかということは常に念頭に置いて事業展開をしてきました。昨今のような先行きの見通しがきかない世の中に、必ずしも正解はないと思います。たとえばタピオカが流行しているからといって飛びついても、5年後には不正解になるかもしれない。我々の判断基準は、お金が儲かるかどうかではなく、未来を面白くするかどうか。そう考えて事業展開もしてきました。当社が目指す「面白さ」とは、新しい価値の創造であり、真に未来に繋がる事業です。そういうスタンスをご評価いただいているのではないかと考えています。
創造的な未来を目指す人たちが活躍するために、どんな取り組みをされていますか。
昨年、創業から半世紀を迎えましたが、最初から多様で優秀な人材が集まっていたわけではありませんでした。まだ社員が10人、20人の頃には、情報の伝わり方がスムーズだったので、社内の情報伝達も非常にシンプルでわかりやすかったんです。ところが社員数50~60人の規模になってから、私たちが思っていることが現場のメンバーに伝わらないという現象が起き始めました。
そこで、横のつながりをどう作るか考えた末、「委員会制度」を作ったのです。たとえば「社会貢献委員会」とか「遊び委員会」などがありまして、社員は何らかの委員会に必ず所属して、予算をちゃんとつけて、社会のためになるような活動をやってもらっています。「遊び委員会」は、みんなで楽しめる遊びを考えるんです(笑)。仕事は楽しくなくちゃいけませんからね。いろんな人たちが意見を交わしながら合意までたどりつくプロセスが大切だと考えて進めています。
もう一つ地域に感じるのは、都会でキャリアを積んだ人たちが地元に戻ろうと思っても、すんなり戻れない障壁があることです。能力を生かす器がないというか、会社自体が少ない。私自身、大学入学と同時に上京し、15年前に帰郷するまで都会にいたのでよくわかります。Uターンした人の能力を生かすために、自由な発想で事業を展開してきたことが、「面白い会社」という評価につながっているかもしれません。
社長にとって「未来を創造する」とはどういうイメージでしょうか。
クラビズのミッションは、「未来のために、手の届く場所から世界を変える」です。その最上位に位置付けているのが、社会のために役立つ何かを興していくことです。いきなり我々が世界を変えられるのかというと、まだそこまでは及びませんが、我々にでも手が届くのは、やはり地域です。
地域には、手を伸ばせば変えられそうな課題がたくさんあります。たとえば孤食や貧困、ワーキングプア、治安など...見回せば実にいろいろな社会問題を目の当たりにします。地方行政や国が支援できないなら、我々のような民間企業や個人が課題を解消すればよいのではないかと考え、手の届く地域からウェルビーイングにすることをミッションにしています。
次世代が“ウェルビーイング”を実現できる、豊かな町へとイノベーション。
なるほど。「地域から世界へ」という御社のコンセプト通りですね。
はい。しかし地域を変えようと思うと費用も必要です。ならば、そのために企業として売り上げを上げ、利益を生み出そうよと方針を定めました。何のために今日頑張るのか、何のために売り上げを伸ばすのかというと、「クルーザーを持ちたい」とかそういう目的ではなく、あくまでも社会に還元するため。そういう意識を持つことが、働くことの意味であり意義だと思うのです。
今がよければいいというわけではなく、我々が感じてきた幸せを,次世代にもちゃんと感じてもらえるような社会を作らなければと考えています。この町に愛着を持って暮らす子どもたちが増えるよう、山積するさまざまな問題を解決しなければいけない。そのためには、クリエイティブな人たちが育つことをよしとする企業が地域に増えて、人も企業も成長することが必要です。そのことが、町のイノベーションにもつながるのです。
自分で考え、自分で生き抜く力を養い、
社会の役に立つ未来を創り出す。
御社のミッションを成し遂げるために必要な人材像とは。
そうですね。やはり自分で考えて、自分で行動できる人です。そういう人物をどれだけ多く育てるかが大切だと思っています。それも、会社のためではなく、自分のためにやってほしい。今の世の中の先行きはとても不透明です。そこで生き抜く力をつけるためにも、自分で考える力は必要です。社員みんなが議論を重ね、「これは未来のためにやるべきか」「社会のために必要なことか」をしっかり見極めて決断をし、アクションを起こしてほしい。
優秀な能力の活用について教えてください。またスタッフが定着するためにどんな工夫やフォローをされていますか。
我々の会社もようやく人事制度やフォロー体制が整ってきたばかりで、まだまだこれからです。大切にしているのは、人対人というあり方です。会社が上で、社員が下という関係ではなく、お互いの価値を認めて提供し合うイーブンの関係でいたい。働いてもらった分、会社は対価や報酬を提供しなければならないし、メンバーは自分の価値を発揮してくれる。自分のやるべきことを明確にして実行すれば、きちんとフィードバックをし、きちんと評価するという仕組みづくりを進めています。
実はかつて、とても頑張っている社員が、我々のフォローが足りなかったことで退職してしまったという苦い経験がありました。もし今の当社だったら、もっと能力を生かしてあげることができたのではないかという後悔も。そういう経験も経て、よりメンバーとの良い関係づくりや働きやすい環境づくりを優先しているつもりです。
知識や技術、資格、あるいは地域との関係性などのハード面の取り組みを。
地域を深く知ろうという知的好奇心は大切です。倉敷には大原美術館があり、美しい倉敷美観地区もあります。けれど今ある姿は表層的なもので、実は背景には、歴史や思想が厳然と存在するんですよね。児島の綿花から生まれた繊維産業があり、紡績工場で女工さんが働いていた時代に、大原孫三郎は、労働者のための学校や労働研究所や病院を作った。そういう地域の背景を深く知って、伝える使命があると感じています。
皆さんの、価値提供の場として会社があるのだと意識しながら、自分が能力を発揮できる環境を作ることで、もっと自由に能力を発揮してもらえるのではないかと思っています。会社はあくまでも「箱」と考えて、社員一人一人が自立して生きていけるスキルや人間性のレベルに達してしてほしいと思っています。会社としては、「クラビズで働いてよかった」と思ってもらえるようなエンゲージメントを上げていくことが目標です。
株式会社クラビズ 代表取締役 秋葉 優一
PROFILE
倉敷市生まれ。東京で人材・IT業界のスタートアップなどに関わったのち2008年に帰郷。家業の広告代理店に入社し、2010年に代表に就任。
13年に現社名に変更する。以来、広告代理業を核にWEB制作、デジタルマーケティング、EC運営、アパレル、飲食などの事業を展開。
まちづくり会社「株式会社KOMA」を設立し、無料で学べる「街場の学校」を開催。人材紹介会社「クラビズヒューマン」では、優秀な人材と企業とのマッチングを行なっている。